一室だけで会期も1ヵ月弱と小さな展覧会ですが、ライデンのシーボルトハウスで開催された「北斎大波」展はよいものでした。
《神奈川沖浪裏》を見るための小部屋の入口には北斎の作品をモティーフにした暖簾がかけられています。
この部屋はとても小さいので、人数制限されていて5人しか入れません。
なかでは北斎の浪の変遷がわかるように時代順に1815年から1836年までの北斎漫画などが4冊展示されていました。
「寄波 引波」『北斎漫画』二編、1815年 |
白い波頭が鷲の鉤爪の様になっています。
「三尊窟」『北斎漫画』五編、1816年 |
右下の浪が《神奈川沖浪裏》を彷彿とさせる力強さです。
「海上の不二」『富嶽百景』二編、1835年 |
《神奈川沖浪裏》の制作した後に作られた作品。荒々しい波頭は《神奈川沖浪裏》のようですが、整って技巧的になっています。
「うち上げる浪 打ち下ろすなみ」『諸職絵本葛飾新雛形』1836年 |
ぐるぐると泡立っているような浪です。
北斎の浪の歴史をこれら4冊で見た後に、いよいよ《神奈川沖浪裏》の登場です。
《神奈川沖浪裏》が2枚並べて展示されていました。この2枚はバージョン違いだそうです。
浮世絵は同じ版木で何回も刷ります。なので、版が新しいほうが線がはっきりとして、そのあと何度も刷っていくと線がかけたり全体に版のエッジが甘くなって全体にぼんやりした印象になります。
上にある2枚の《神奈川沖浪裏》だと、1枚目の作品が版が新しい時に刷られたもので、2枚目が版を重ねた後に刷られたものです。
2枚を近くで比べて見ると、2枚目のほうが先の強弱が甘くなっていたり、波しぶきの丸い粒のふちがもやもやと曖昧になっていたりするのがわかります。
《富嶽三十六景 凱風快晴》1831年 |
そのほか、赤富士《凱風快晴》や雷富士《山下白雨》も見られます。
北斎が描いた有名な富士の絵をコンパクトに全部見られました。しかも、版の違いなどの説明もされていて、小さいながら満足度の高い展示です。
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