「花はどこへ行った」:ゴッホとキーファーの芸術的対話~Kiefer - Sag mir wo die Blumen sind at Van Gogh Museum in Amsterdam

2025年3月24日月曜日

アムステルダム ゴッホ美術館 展覧会

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ゴッホ美術館で開催されているアンゼルム・キーファーの展覧会「花はどこへ行った」は、キーファーがゴッホの足跡や作品を通しておこなった芸術的な対話に焦点をあてられた展覧会でした。


キーファーに与えたゴッホの影響


本展覧会に展示された作品からは、ゴッホがキーファーに与えた永続的な影響が、色彩、モチーフ、マチエール、そして構図の中で鮮明に浮かび上がっています。


Anselm Kiefer, De sterrennacht, 2019

特に《星月夜》や《カラスのいる麦畑》はインスピレーションを受けたゴッホの作品が明らかにわかる形で再解釈され、「ひまわり」や「麦畑」に象徴されるテーマが、ゴッホへの敬意と共感を示しつつキーファー独自の文脈で再構築されている点は見逃せません。



ゴッホの《星月夜》に見られる大胆な筆致が麦藁でさらに力強く表現されています。

Anselm Kiefer, Nevermore, 2014

ゴッホの《カラスのいる麦畑》のなかの奥に入り込んだような画面。カラスたちが飛び立つ様子が大迫力で迫ってきます。


Vincent van Gogh, Wheatfield with Crows, 1890

敬意と共感:キーファーのスケッチに見るゴッホの精神


アンゼルム・キーファーは、18歳という若さで、奨学金を活用してオランダからベルギー、フランスへと旅をしました。その旅路は、フィンセント・ファン・ゴッホの足跡を辿るものであり、若きキーファーの内なる芸術的感性を大いに刺激しました。


Anselm Kiefer, Untitled, series, 1963


Anselm Kiefer, Untitled, series, 1963

キーファーが18歳の頃に行ったスケッチには、ゴッホへの深い敬意と共感が込められています。一見するとゴッホのものと見紛うキーファーのスケッチは、若きキーファーの感受性がゴッホの芸術精神に深く共鳴していたことを証明するものであり、画風の類似性からもその影響の大きさをうかがい知ることができます。



「花はどこへ行った」:花は枯れても、なお…


ゴッホが芸術を通じてその時代の苦悩や希望を表現したように、キーファーもまた、自身の作品に歴史意識を深く刻み込んでいます。戦争、破壊、再生というテーマが彼の作品に広く反映されており、特にひまわりをモティーフに扱った作品では、その象徴的な要素が際立っています。


Anselm Kiefer, Sol Invictus, 1995

下に横たわる裸の男性の傍らに、大きなひまわりが立っています。




ゴッホのひまわりが光や生命を讃える存在である一方で、キーファーのひまわりは、大量の種を落とすことで破壊の中に秘められた再生の可能性を描き出しています。この種がすべて発芽するわけではないけれども、それでもなお自然のサイクルが持つ力強さを感じさせるものです。


Anselm Kiefer, Steigend, steigend, sinke nieder, 2016-2024




大量のひまわりの種が本の上にこぼれ落ちています。多くのものを取りこぼしながらも歴史が紡がれ、引き継がれていくさまが表現されているようです。


Vincent van Gogh, Sunflowers Gone to Seed, 1887



ゴッホ美術館で響き合う創造性の遺産


本展覧会「花はどこへ行った」は、ゴッホ美術館という特別な場所で開催される意義深い企画です。キーファーがゴッホの足跡を追い、その人生を追体験しながら、彼の作品を深く研究する中で築き上げた芸術的な対話を観る者に鮮やかに想起させます。

それはまた、象徴的な存在としてのゴッホという「巨大なひまわり」から受け取った種子を、キーファーが自らの芸術的な土壌に根付かせ、そこから新たな生命や創造を育み、成熟させていくプロセスそのものでもありました。


Kiefer - Sag mir wo die Blumen sind
2025年3月7日~2025年6月9日



Van Gogh Museum
Museumplein 6
1071 DJ Amsterdam
http://www.vangoghmuseum.com/en

 


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ミイル。ブログ Miruu 管理人。オランダ芸術や街散策を中心に、美術だけでなく建築なども含めた芸術について広く紹介します。 Twitter: ミイル@miirublog

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