【フェルメール】贋作者ファン・メーヘレン

2014年8月6日水曜日

フェルメール

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2010年にロッテルダムのボイマンス・ファン・ベーニンヘン美術館で興味深い展覧会が開かれました。贋作者ハン・ファン・メーヘレンの展覧会です。

ファン・メーヘレンが描いた贋作は17世紀オランダの画家のもので、フランス・ハルス、デ・ホーホなど名だたる画家のものですが、彼の名を世に知らしめたのはフェルメールの贋作です。そのうちの一枚は展覧会を開催したボイマンス・ファン・ベーニンヘン美術館が所蔵する《エマオの食事》です。この作品は現在でも美術館の片隅に見つけられるのを恐れるようにひっそりと壁にかけられています。

ファン・メーヘレンのフェルメール贋作展」に出品されていた作品は、大変痛ましい姿をしていました。20世紀半ばに制作されたものにもかかわらず、画面のほとんどは暗く変色し、絵の具はボロボロと剥がれ落ちており、キャンバスを丸めたり折ったりした痕がくっきりとみてとれましたまるで倉庫で数世紀にもわたって打ち捨てられていたもののようです。(実際、贋作だと判明したあとは放置されていたのでしょう) 私はこれらの作品からフェルメールを想起させるものを見つけることはできませんでした。

油彩画だったか、資料写真として展示されていたのかははっきりと覚えていないのですが、ファン・メーヘレン自身の作品として発表された作品もありました。それは、確かに技巧的に優れてはいましたが、印象派やダダイズムが席巻していた時代にはそぐわない前時代的な画風でした。

この展覧会を見たあと、贋作者ファン・メーヘレンに興味を持ち、つい先日、フランク・ウイン著『私はフェルメール-20世紀最大の贋作事件』(2007)を読む機会を得ました。

展覧会で実際のファン・メーヘレンの作品を目にしたときには、どう見てもフェルメールの作品とは見えないにも関わらず、なぜ美術史家や修復家、ギャラリストなど多くの専門家が簡単にだまされ、また決して美しいとは思えない作品の発見に称賛を与えたのかが理解できなかったのですが、これを読んでみるとなるほどという思いになりました。

ファン・メーヘレンの巧妙な技法もさることながら、美術界の重鎮ブレディウスが与えた鑑定書の重要さ、そして「期待されたフェルメール作品」がタイミングよく「発見」されたこと、フェルメール作品の他国への流出を防ぎたいというナショナリズムなど、さまざまなことが絡み合って生み出された事件だったということです。

面白かったのが裁判でファン・メーヘレン自身が自ら制作した作品であると証言したにも関わらず、「これはフェルメール作品である」と信じて疑わない専門家がいたということです。人は信じたいものを見ると言いますが、まさにそんな印象を受けました。

作品の科学調査が発達した現在でも美術館に贋作が展示されているのかもしれないと考えると、なかなかスリリングな気がします。


この動画は「ファン・メーヘレンのフェルメール贋作展」に合わせて作られたものです。オランダ語での解説(英語字幕)ですが、ファン・メーヘレンの裁判時の映像が含まれていて、大変興味深いです。法廷の壁にファン・メーヘレンの作品が掛けられ、彼の個展のような様相を見せています。
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ミイル。ブログ Miruu 管理人。オランダ芸術や街散策を中心に、美術だけでなく建築なども含めた芸術について広く紹介します。 Twitter: ミイル@miirublog

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