マティスは大好きな画家のひとりです。しかもアムステルダム市立美術館が再オープンしたときに初めて見た《インコと人魚》の心躍るような楽しい色彩と形に魅了され、今回はこの作品を核にした展覧会ということでいやがうえにも高まる期待を胸に美術館を訪れました。
展覧会は一階と二階に分かれて展示されていて、目当ての作品は二階に展示されているとの事前情報を得ていたので、開館時間の10時ちょうどに入館して一目散に二階へと向かいしました。
誰もいない展示室で大好きな《インコと人魚》とそのほかの大きな「切り紙絵」の作品を15分ほど一人占めでき、とても幸せな時間を過ごしました。
「切り紙絵」はその字のごとく、グワァッシュで色を塗った紙をハサミで切り取り、それらを配置して作られた作品です。こればマティスが晩年、腸の疾患により大手術を受けて体力が落ちていたときに作り出した新しい技法です。
長い美術の歴史において「線」と「色」とは長く対立する要素とされ、それをいかに調和されるかというのが長い間画家たちが取り組んできた問題なのですが、その一つの答えとなったのがマティスが作り出した「切り紙絵」です。
マティスはハサミでドローイングするように色付けされた紙を切り、形を生み出していきます。展示室で切り紙を制作するマティスの様子を撮影した動画を見ましたが、そのとき驚いたのが、マティスは色紙を左手で持ち上げて、ひらひらと揺れる紙をするすると器用に切り出している様子です。そして、その切り出した色紙を助手に渡し、自室の壁にハンマーと釘で指示した場所に打ち付けます。
その自室の写真が上の二点です。この部屋で作られたのが《インコと人魚》です。この写真の中にはインコはいますが、まだ作品右上の人魚はいません。この後に変更が加えられたのでしょう。(インコは左の写真の右中央あたりにある縦長の青いのがそうです)
《インコと人魚》が展示されている部屋を堪能した後、10時半からマティスが手がけたヴァンスのロザリオ礼拝堂に関するフィルムを見ました。このフィルムがとても感動的でした。
マティスの術後の生活と制作を助けたモニクという女性がいました。しばらくして彼女は体調を理由にマティスのもとを離れましたが、第二次大戦後の1946年、修道女ジャック・マリーと名前を変えてヴァンスへ戻ってきて、再びマティスとの交流が始まります。ジャック・マリーは戦時中に焼け落ちたロザリオ礼拝堂を再建のためにマティスに相談を持ち掛けたところ、彼は装飾を(強引に)一手に引き受け、彼女は修道会とマティスの仲介役として貢献しました。
このフィルムはジャック・マリーのインタビューという形で進められていくのですが、彼女がとってもチャーミングなんです。また彼女の語るマティスもとってもチャーミングでますます大好きになりました。
展示室にももちろんロザリオ礼拝堂に関連する作品が展示されています。
一階の展示室にはマティスが切り紙に至るまでの油彩画と素描などが、同時代の画家たちと影響を受けた画家たちの作品と比較展示されています。フォーヴィスムと点描法がいかにマティスの芸術を変えていったのかが、よく理解できました。
「マティスのオアシス展」
アムステルダム市立美術館 Stedelijkmuseum
1071 DJ
Amsterdam
The
Netherlands
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