オランダ17世紀版「家政婦は見た」、ニコラス・マース~Nicolaes Maes @ Mauritshuis in Den Haag

2020年2月26日水曜日

デン・ハーグ マウリッツハイス美術館 展覧会

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2020年1月19日まで、ニコラス・マースの展覧会がマウリッツハイスで開催されていました。

ニコラス・マースはおラダン黄金時代の画家で、日本だと多くのオランダの風俗画家の一人としてまとめて紹介されることが多いようです。しかし、彼こそが室内で営まれる日常生活の風景を芸術にまで高めた立役者です。


彼はレンブラントの最も才能ある弟子の一人で、レンブラントが描いた聖書の世界や歴史画から人物の感情表現や照明の効果を学びました。その後、アムステルダムにあったレンブラントの工房を離れて生まれ故郷のドルトレヒトに戻り、室内で生活を営む市民の姿を描くようになりました。

彼の代表作は覗き見たり聞き耳を立てたりして他人の秘密を知ってしまう女性を描いた作品で、全部で6点制作されました。そのうち3点が今回の展覧会で展示されました。

どの作品でも女性は人差し指を口に当てたポーズでこちらを向いています。作品を見る私たちも彼女と一緒に他人の秘密を垣間見ているようなスリリングな感情に襲われます。


The Eavesdropper, ca.1656, Wellington Collection, Apsley House (English Hermitage), London
腰から下げられている鍵と毛皮をあしらった上着からこの家の女主人だと思われる人物が階段から降りてきて、その途中で侍女の逢引きに気づいて聞き耳を立てています。こちらに語り掛けるような表情はレンブラントから学んだものでしょう。

逢引きをする侍女の足元には赤ん坊が寝むる揺り籠があるのですが、彼女の注意は赤ん坊からすっかりそれてしまって、男の方にしなだれかかっています。


The Eavesdropper, 1657, Dordrechts Museum, Dordrecht
左上のダイニングルームからグラスを持って降りてきた女性が、侍女が男性に誘惑されていることに気づいた場面です。

このシリーズ最大の作品であり、最も画面構成が複雑な作品です。中央の女性にスポットライトのように光が当たっていて、劇場のような舞台設定です。


The Eavesdropper, 1655, Guildhall Art Gallery (Samuel Collection), Mansion House, London
こちらは侍女が女主人の会話に聞き耳を立てています。女主人が会話している相手が、だまし絵として絵に描かれているカーテンで隠されているため、誰と話しているのかこちらの想像力を掻き立てられます。

女主人は腰に手を当てて、身を乗り出しているので何か起こっているのかも知れません。


Young Mother with her Children, ca.1656, Museo Nacional Thyssen-Bornemisza, Madrid

窓際の母子が描かれています。



母親が手にしているのは躾として子どもをたたくときに使った木の枝です。

母親は揺り籠のなかで赤ちゃんが寝ているのに、男の子が太鼓をたたいて大きな音を出したので叱ったのでしょう。男の子が持っていた太鼓のばちが一本、床に落ちています。



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Nicolaes Maes
2019.10.17-2020.01.19

Mauritshuis Museum
Plein 29
2511 CS Den Haag
https://www.mauritshuis.nl/en/
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ミイル。ブログ Miruu 管理人。オランダ芸術や街散策を中心に、美術だけでなく建築なども含めた芸術について広く紹介します。 Twitter: ミイル@miirublog

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