時代を超える美術の対話~Collected with Vision. Private Collections in Dialogue with the Old Masters at KMSKA in Antwerpen

2025年5月5日月曜日

アントワープ王立美術館 ベルギー 展覧会

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KMSKA(アントワープ王立美術館)では、4月4日より「Collected with Vision」展が公開されています。この展示では、過去と現代の芸術が交差する貴重な機会となっています。

また、個人コレクションの重要性にも焦点が当てられています。美術館が公共に芸術を広めるのと同様に、個人コレクターもまた、作品を公開し、文化の豊かさを支えています。本展示は、こうした公的機関と個人コレクターの協力がどのように芸術の発展に貢献するかを示しています。

「蒐集ー会話する断片」の章では美術館が所蔵する17世紀の絵画作品と個人コレクターが有する20世紀の写真作品が対比されていました。


Frans Franken II, A Collector's Cabinet, 1, KMSKA

上の作品を描いたフランス・フランケン2世は17世紀に「美術室の絵」と呼ばれるジャンルの作品を多く残しました。ここには芸術や科学、異国の品物など、フランケン2世が興味を抱くものが所狭しと飾られています。


Cindy Sherman, New Jersey, 1954, Private Collection

一方、シンディ・シャーマンは20世紀の女性コレクターに扮しました。背後にある壁面には彼女が集めた美術作品が壁が見えないほどかけられています。

フランケン2世の作品ではコレクターの知識、富、地位を映しだしています。シャーマンの作品では、集められた美術品よりも、コレクターが外界に対して自分をどのように見せるかに関心がある。コレクターのあり方がこの二作品を対比することであらわれました。


Olafur Eliasson, Lighthouse Lamp, 2004, KMSKA
Hans Memling, God the Father with Singing and Music-Making Angels, 1483-1494, Filiep and Mimi Libeert Collection

美と光に満ちた調和のとれた空間を表現するオラファー・エリアソンとハンス・メムリンクの三連祭壇画。


Lou Reed's guitar, Private Collection

ハンス・メムリンクの三連祭壇画の右の壁に展示されていたのが、音楽の象徴としてギターが展示されていました。そこには、アンディ・ウォーホルのシンボルのバナナがあり、ウォーホルはサインもしています。

現代の神が奏でる音楽は古典音楽じゃなくて、現代の音楽なのでしょう。


Marlene Dumas, A. Warhol. See through, 2002, Frank & Eliane Demaegd-Breynaert Collection

19世紀の有名画家たちの自画像のなかに、マレーネ・デュマによるアメリカのポップアートのアーティスト、アンディ・ウォーホルの肖像画が展示されています。

古くから画家はモデルとして女性を好んで描いてきました。ウォーホルも例外ではなく、マリリン・モンローをシルクスクリーンで作品にしました。

ここでは、女性画家デュマに描かれた男性画家ウォーホルの肖像画が、自信に満ちた男性画家の肖像画の間に置かれています。描かれる立場ではなく、窮屈な描かれる立場へと女性も男性を描く立場になった歴史の流れが見て取れます。


Jan Massijs, Judith, ca. 1554, KMSKA
Marlene Dumas, Hierarchy, 1992, Collection Maatschooij KEMPCOP

どちらも作品も女性が男性を害していますが、その文脈は異なります。左のユディトは家父長制社会における女性の勇気と力の象徴であり、右のデュマが描いた作品はこれまで女性が被ってきた性的な力関係を逆転させています。

また、マセイスの作品に描かれる女性は薄布のドレスをまとい男性を魅了する姿をしていますが、デュマの方はより力強く、男性から見られる立場ではない女性が描かれています。


Key Adriaen Thomasz, Maria de Deckere, Second Wife of Gillis de Smidt, and Beatrix, One of their Daughters, 1575, KMSKA
Thomas Houseago, Skull Head I, 2023, Private Collection
Gillis Coignet I, Pierson la Hues, Drummer and Page of the Old Archers' Guild, 1581, KMSKA

ドクロの彫刻が16世紀の絵画の間に置かれています。

ドクロの左側には修道院の内側に隔離され守られた世界が描かれ、右側には外の世界が描かれています。




中央のドクロを見ると目の表現が違います。左側は肉が落ちて丸い眼窩が見えています。右はまだ瞼のあります。このドクロは拮抗する内側と外側の世界のバランスが見えます。

「Visionair Verzameld」は、1966年以降の現代美術と美術館のオールドマスター作品を組み合わせ、新しい視点を提供する試みです。この展示では、収集や神の世界、男と女など永遠のテーマを再解釈する場となり、芸術の普遍的な力と変容した世界の常識を浮き彫りにしました。



Collected with Vision. Private Collections in Dialogue with the Old Masters
2025年4月4日~2025年10月12日



アントワープ王立美術館
KMSKA (Koninklijk Museum voor Schone Kunsten Antwerpen)
Leopold de Waelplaats 1, 2000 Antwerpen


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ミイル。ブログ Miruu 管理人。オランダ芸術や街散策を中心に、美術だけでなく建築なども含めた芸術について広く紹介します。 Twitter: ミイル@miirublog

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