マウリッツハイス美術館と第二次大戦の記憶~Facing the StormA Museum in Wartime at Mauritshuismuseum in Den Haag

2025年5月7日水曜日

デン・ハーグ マウリッツハイス美術館 展覧会

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マウリッツハイス美術館は、2025年の今年、オランダ解放80周年を記念し、特別展「Facing the Storm – A Museum in Wartime」を開催しています。この展覧会では、ナチス占領下の激動の時代における美術館の歴史を振り返っています。



オランダがドイツ軍に占領された際、マウリッツハイス美術館は政治的権力の中心地のすぐそばに位置していました。美術館は、ナチス政権の政治的中心地のすぐそばに位置し、ドイツ政府の主要機関がすぐ近くにありました。

占領時下のマウリッツハイス美術館館長ウィルヘルム・マルティンは、美術館の世界的な絵画コレクションを守るという重大な課題に直面し、またナチスの求めるプロパガンダ的な役割との折り合いをどうつけるかに苦心していました。

美術館は戦争の脅威により1939年8月25日に閉館し、1940年6月6日に再開しました。しかし、展示された作品はごくわずかでした。マウリッツハイス美術館には爆撃に耐え得る「美術保管庫」 があり、夜間はすべての名作をそこへ保管し、昼間には一部を展示していました。


絵画が外され、額縁だけが残る展示室

さらに、戦争が進むんで激しさが増すにつれ、館長ウィルヘルム・マルティンは最も重要な作品は各地の 「国家保管施設」 へ移送し、作品は戦争終結まで保管施設で保管されました。


Paulus Potter, Cattle in a Meadow, 1652

展示室に入っていないパウルス・ポッターが牛を描いた作品がありました。




裏に回ってみると、左上に白い三角形があるのがわかります。この三角形はこの作品の重要度を表すもので、重要度が高いものからマウリッツハイス美術館から各地の国家保管施設へと移送されました。

この三角形の色はオランダの国旗の色にちなんで三色ありました。重要度の高いものから赤、白、青と色が分けられていました。




赤い三角形が描かれた作品たち。優先的に施設へ送られました。なかでも重要な作品はオランダ内にある保管施設を複数回にわたって移動します。


国家保管施設があった場所とマウリッツハイス美術館のあるデン・ハーグの位置

オランダの国家保管施設はザンドフォールト(Zandvoort)とマーストリヒト(Maastricht)、そしてパースロー(Paasloo)の三か所にありました。

フェルメールの《真珠の耳飾りの少女》はこのうち二つの施設へと移送されています。まず、1941年にデン・ハーグ(Den Haag)にある美術館からザンドフォールト(Zandvoort)に移され、1942年にふたたびデン・ハーグに戻ってからマーストリヒト(Maastricht)に移動しました。


赤、白、青の三角形が付けられた作品

戦後になっても美術館は戦時中の影響を受け続けました。美術館は 1945年9月1日 になってようやくナチスの求めるプロパガンダから離れた初めての展覧会を開きました。そこでは戦前最後の収蔵品となった 《聖母子像》 などが展示されました。

現在開催中のの展覧会「Facing the Storm – A Museum in Wartime」は、戦時中の美術館と芸術の激動の運命を振り返るとともに、知られざる戦時中の美術館の内側の歴史が語られていました。さまざまな抑圧なのかでいかに芸術を守るかという美術館の葛藤を知る貴重な機会となりました。



Facing the Storm: A Museum in Wartime
2025年2月13日~2025年6月29日



Mauritshuis Museum
Plein 29
2511 CS Den Haaf
https://www.mauritshuis.nl/en/




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ミイル。ブログ Miruu 管理人。オランダ芸術や街散策を中心に、美術だけでなく建築なども含めた芸術について広く紹介します。 Twitter: ミイル@miirublog

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