修復スタジオの扉を開く、マウリツハイス美術館で進行中の《牡牛》修復プロジェクト~A Peek at Potter - Investigating the Bull at Mauritshuis Museum in Den Haag

2025年5月14日水曜日

デン・ハーグ マウリッツハイス美術館 修復

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パウルス・ポッテルの名作《牡牛》の修復プロジェクトが、マウリツハイス美術館で進行中です。この絵画は、50年前に最後の修復が行われて以来、保存技術が大きく進歩したことを受け、最新の技術を駆使した修復作業が行われています。


2025年4月の様子


修復の目的とプロセス


この修復プロジェクトの目的は、ポッテルの絵画技法や制作過程をより深く理解し、作品を未来の世代へと受け継ぐことです。2024年3月末から技術的な調査が行われ、調査が終わった後に本格的な修復作業が開始されました。作業は約18か月にわたり、2025年秋まで続く見込みです。


2024年4月、比較対象としてポッテルの円形の作品も



修復の舞台裏

2024年4月の様子

修復作業は、一般公開される形で進められます。絵画は壁から取り外され、修復スタジオに作り変えられた展示室の一室に移動されました。訪問者はガラス越しに修復の様子を観察でき、科学的な機器を用いた作業を間近で見ることができます。




作品の変遷と技術的発見


調査の初期段階では、ポッテルが制作過程で多くの変更を加えていたことが判明しました。例えば、赤外線技術を用いた分析により、牡牛の後ろ脚の位置が変更されていたことや、最初に描かれた柵が後に取り除かれたことが確認されています。また、背景の風景も初期段階では異なっていたことが分かっています。


《牡牛》の変遷年表



修復の課題


特に注目されるのは、絵画の空の部分です。長年の経年劣化により、元々の青空が変色し、損傷を受けています。過去の修復では、この損傷部分を上塗りすることで補修していましたが、今回の修復では、可能な限りオリジナルの状態に戻すことを目指しています。

また、この作品は2枚の布を貼り合わされて1枚のキャンバスとして描かれています。その貼り合わせた部分が浮き上がってきて、横に一本線が走っているようになっているので、そこも鑑賞に堪えられるように修復されます。


芸術と科学の交差


この修復プロジェクトは、単なる技術的な作業ではなく、歴史的な名画が再び息を吹き返す瞬間を目撃する貴重な機会です。芸術と科学が交差するこの試みは、私たちに作品の奥深さを再認識させると同時に、未来の世代へと継承される美術の価値を改めて示しています。絵画の修復は、ただ過去を保存するだけでなく、新たな発見と共に未来へとつながる重要な旅なのです。





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ミイル。ブログ Miruu 管理人。オランダ芸術や街散策を中心に、美術だけでなく建築なども含めた芸術について広く紹介します。 Twitter: ミイル@miirublog

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