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| 階段を上がってカフェのある方を振り返ったところ |
このカフェは、博物館の中心部にある大理石の階段に近くにあります。この階段は、Daniel BurenやLawrence Weinerのインスタレーション、そしてAnselm Kieferの圧倒的な作品の舞台にもなった場所です。
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| キーファーのインスタレーション《花はどこへ行った》(2025) |
階段の周りを歩いているとコーヒーのいい匂いが漂ってきました。

カフェにはいるとテーブル席が並んでいます。奥にはカウンターがあり、さらにその向こう側にも席が用意されていました。
まずは、カウンターでラテとバナナブレッドを注文し、支払いを済ませました。その場でバナナブレッドを受け取り、さきほどカウンター越しに目をつけていた窓際の席へと向かいます。

大きな窓に面したハイチェアに腰を下ろしました。少し高さがあるので、心の中で「よいしょ」と小さく声をかけながらそっと上りました。窓の高さに合わせたテーブルの位置は、座るとちょうど胸のあたりに来るほどで、外の景色を自然と眺めやすい設計になっています。
窓の外には、穏やかな青空の下、オランダらしい温かみのある煉瓦造りの建物が連なっています。その前を、自転車やトラムがゆったりと行き交う様子が、ガラス越しに静かに広がっていました。高い位置の席から見る街並みは、日常の喧騒から少しだけ距離を置いた、穏やかで慈しむような視点を与えてくれます。

バナナブレッドは素朴な甘さとナッツの心地よい食感が魅力で、シンプルでありながら深い満足感を与えてくれます。上面に塗られたほろ苦いチョコレートペーストと、ぱらりと振られた塩が、素朴な味わいに洗練されたアクセントを添えていました。
一口ごとに、展覧会で受けた多くの刺激がほどけ、思考が自然と整理されていくのを感じました。芸術作品に深く触れたあと、こうした日常のささやかな行為が、思った以上に大切な役割を果たしてくれることがあります。
Danh Voの展覧会では、彼自身の出自や歴史の断片を、決して大仰に語ることなく、控えめで誠実な手法で提示していました。自由の女神の破片、父親が「形」として模写した西洋の詩、土地と人を支配するためのプロセスとして分類・整理することへの批評としての花の写真……それらが静かに並べられることで、大きな物語に押しつけられることなく提示しています。しかし、その提示された物語の背景にある移民・難民の困難や苦しみが、オランダで移民として生きている私の心に強く突き刺さり、強い印象を残しました。
展覧会を見た直後に迎えたこのカフェでの時間は、ちょうどよい「間合い」のように感じられました。
ここではただ、窓の外の風景と、手元の温かな飲み物、そして甘い食べ物に意識を向けていました。展覧会をより深く受け止めるためには、こうした静かなひとときが、実は欠かせないのかもしれません。
▶Fonda Caféがあるアムステルダム市立美術館の公式サイト
▶カフェに行く前にみたDanh Voの展覧会
▶階段を使ったキーファーの巨大インスタレーション
▶おとなりのゴッホ美術館ではひまわりケーキが食べられます




