ロッテルダムのミュージアムパークに、静かに佇む一つの建築があります。巨大な銀の器のようなその佇まいは、1,664枚の鏡パネルに覆われ、周囲の木々や空、隣接する博物館の姿を柔らかく映し込んでいます。まるで公園の風景に溶け込むように存在するこの建物こそ、デポ・ボイマンス・ファン・ベーニンヘン(Depot Boijmans Van Beuningen)です。
2021年にオープンしたこの施設は、世界で初めて「美術館の全収蔵品を一般公開でアクセス可能にした」保管施設として、美術史に新たな一頁を刻みました。ただの倉庫ではなく、15万点を超える作品たちが息づく、開かれた森のような空間です。
その最上階にあるレストラン「Restaurant Renilde(レストラン・レニルデ)」へと、今回足を運びました。
可変する美しさ。知性を刺激するインテリア
エレベーターで最上階に上がると、開放感に満ちた空間が迎えてくれます。

レストランには、開放感にあふれた空間が広がっていました。
まず目を奪われるのは、引き算の美学が徹底された洗練されたインテリアです。建築家ヴィニー・マース率いるMVRDVの哲学が息づくこの場所は、コンクリートやガラスといったモダンな素材を基調としながらも、決して冷たくは感じさせません。計算され尽くした照明の柔らかなトーン、厳選されたテキスタイルの質感、そして何より「窓の外に広がる景色」そのものをインテリアの一部として取り込んでいるからです。
また、このレストランは時間帯や用途に応じてテーブル配置やパーテーションを柔軟に変えられる設計になっています。その自由で知的な仕掛けに触れると、空間全体がまるで生きて呼吸しているかのように思えてきます。未来的な外観とは対照的に、どこか人間味のある、穏やかな温かみを感じる場所でした。
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| カラフルなお花も楽しいインテリアの一部 |
空に浮かぶ白樺の森。息をのむ屋上庭園
外にはレストランと地続きになっている屋上庭園があります。この屋上庭園の一部は「Restaurant Renilde(レストラン・レニルデ)」のテラス席にもなっています。

地上35メートルの高さに、静かに佇む白樺の木々。風にそよぐ葉の音を聞きながら過ごしていると、ここが美術館の屋上であることを一瞬忘れてしまうほど、自然の穏やかな空気が満ちています。
庭園の縁に立てば、眼下に広がるのはロッテルダムのダイナミックな街並み。近代的なビル群と、この場所にある瑞々しい自然。その鮮やかなコントラストを眺めながら、外の空気を胸いっぱいに吸い込む瞬間はとてもすてきな時間でした。
一杯のスープが、心と身体を解きほぐす
席に着き、本日のスープとフレッシュオレンジジュースを注文しました。運ばれてきた青豆とじゃがいも、白身魚のスープは、驚くほど深みのある味わいでした。ミュージアムカフェの域を超えた、きちんとしたレストランとしてのクオリティです。

素材そのものの滋味がじんわりと広がる丁寧な味わい。添えられたサワードウのパンは外側がカリッと、中がもっちりしっとりとしており、バターとともにスープと一緒に味わうと格別の幸せを感じます。オランダで訪れたミュージアムカフェの中でも、とくにおいしいと感じた一皿となりました。
五感が満たされる、温かな調和
建築、インテリア、自然、そして食。
すべてが「心地よさ」という一本の糸で静かに繋がっているような、たいへん豊かなレストランでした。
デポ・ボイマンス・ファン・ベーニンゲンという、アートを「保管する」だけでなく「見せる」最先端の場所の頂上に位置する「Restaurant Renilde(レストラン・レニルデ)」は、まさに「空の上の特等席」と言えるでしょう。
デポに入館しないでレストランだけでも行けるので、食べるのが好きな方にもおすすめのミュージアムカフェです。
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