2019年の夏から始まった大規模な調査・修復作業「オペレーション・ナイトウォッチ」は、7年目を迎えた今もなお続いています。
初めてこの修復室の計画を聞いたとき、「世界中から200万人もの人が《夜警》を見に訪れるのに、衆人環視の中で修復して大丈夫なのだろうか」と、少しばかりハラハラしたのを覚えています。
しかし、美術館が選んだのは、展示室の中に「透明なガラス部屋」を設けるという大胆な方法でした。ガラスの向こうで作業に没頭する修復士たちの背中を見つめていると、作品が美術館の奥深くに隠されてしまうのではなく、私たちの目の前で、作品を未来へと引き継くための作業を行っていることがよくわかります。
![]() |
| 2025年3月 |
この長いプロジェクトの歩みを振り返ると、驚きと発見の連続でした。
2021年には、1715年にKloveniersdoelenのホールからダム広場のアムステルダム市役所(現•王宮)に移された際に、展示場所が作品の大きさよりも狭かったため、作品の上下左右が切り詰められていた上下左右のピースが、AI技術によって鮮やかに復元されました。
AIが描き出したオリジナルサイズの画面は、どこか構図にゆとりが生まれ、当時の空間の広がりを感じさせてくれます。
2021年には、1715年にKloveniersdoelenのホールからダム広場のアムステルダム市役所(現•王宮)に移された際に、展示場所が作品の大きさよりも狭かったため、作品の上下左右が切り詰められていた上下左右のピースが、AI技術によって鮮やかに復元されました。
AIが描き出したオリジナルサイズの画面は、どこか構図にゆとりが生まれ、当時の空間の広がりを感じさせてくれます。
![]() |
| 黄色の線の外側がAIで復元された部分(2021年) |
![]() |
| 2021年7月 |
![]() |
| AIで復元するときに参照された《夜警》の模写 Copy of The Night Watch, Gerrit Lundens (attributed to), c. 1642 - c. 1655 |
ただ、背景の建物が真っ黒に塗りつぶされているのを見て、「AI、もう少しガンバレ!」と心の中でこっそりツッコミを入れたことも覚えています。ここ数年のAIの進歩は凄まじいものがあるので、いま改めてAIで再現したら、もっと詳細な画像が再現されるかもしれません。
「オペレーション・ナイトウォッチ」の期間で驚いたのは、修復の過程でカンヴァスの裏側に見る機会に恵まれたことです。
![]() |
| 2021年11月 |
額縁や木枠が外され、剥き出しになったカンヴァスを目の当たりにしたとき、絵画がただの「鑑賞物」ではなく、幾多の傷や修復の歴史を纏ったひとつの「有機物」なのだということを実感させられました。
そして2026年現在、作業は古いワニスの慎重な除去へと進んでいます。長年積み重なった琥珀色のワニスは、画面全体を温かなヴェールで包み込んでいましたが、それが少しずつ拭い去られるにつれて、私たちがこれまで「レンブラントらしい」と信じてきた重厚な闇とは異なる、生々しい真実が顔を出し始めています。金属の冷たい輝きを放つ鎧の質感や、繊細な光の階調。それは、画家が絵筆に込めた息づかいそのものです。
![]() |
| 左右の色が褪せたように見える部分がワニスが除去された場所(2025年3月) |
![]() |
| ワニスの除去が両側から少しずつ進んでいる(2026年9月) |
![]() |
| 2026年9月 |
アントワープ王立美術館のルーベンスの修復などと比べると、この《夜警》修復の歩みは驚くほどゆっくりです。しかし、美術館の前に集い、作品について語り合う子どもたちの弾んだ声を聞いていると、このじっくりとした時間がどれほど豊かなものであるかに気づかされます。
![]() |
| 2025年3月 |
琥珀色の時間を一枚ずつ脱ぎ捨てながら、かつての鮮やかな光と影のドラマを取り戻していく《夜警》。修復の完了は2027年を予定されています。その完璧な姿に再び出逢える日まで、ガラスの向こうで行われる作業を、静かに、そしてワクワクしながら見守り続けたいと思います。
【公式サイト】
【関連記事】








