マウリッツハイス美術館の展覧会「verso(裏)」は、間違いなくそのひとつです。
それも、これまで十分な鑑賞経験を持った人には特に衝撃が大きいと思います。
上の写真は展覧会会場です。はっきり言って地味です。会場に入って、ほんとここでいいのか?と不安になりました。
解説もキャプションもなく、まるでまだ展覧会の準備中のようです。
会場前で必ずオーディオガイド(蘭・英)を借りてください。そうしないと、何の作品の裏かわかりません。
これはレジェの《スモーカー》です。
これらのシールを見ると、これまで出品された展覧会の情報など、作品の履歴や歴史が分かります。
これはゴッホの《星月夜》。
1993年に日本に行ったことが分かります。
セキュリティー装置が張り付けられたレオナルド・ダ・ヴィンチの《モナリザ》。
マウリッツハイス美術館のフェルメール《真珠の耳飾りの少女》。
その他にもピカソの《アヴィニョンの娘》やレンブラントの《トゥルプ博士の解剖学講義》など、そうそうたる作品が床に置かれています。
これらはもちろん「実際の」作品ではありません。
ブラジル人アーティストのVik Munizによる、有名作品の「裏面」です。
表面を覗き込んでも、作品はありません。
彼の再現技術やその哲学も素晴らしいのですが(会場で制作風景とTEDでも講演の映像が見られます)、作品の裏面を見ることで、私は作品の画像とそれに伴う鑑賞体験が記憶の中から引き出されました。
例えば《モナリザ》では学生時代に人の少ない静かなルーブル美術館で見た豊かな時間と数年前の揉みくちゃにされながら見たこと。
《アヴィニョンの娘》を見て「分けわからん」と困惑して考えることを放棄した若い頃、その後、鑑賞経験を積んで「おもしろい!」とポジティブな感情を抱くようになったこと。
そういった作品を見て感じたことや考えたことなど、これまでの鑑賞体験の振り返りみたいなようなものが嵐のように私の内部で巻き起こりました。
いつもは作品を見ることに集中しているのに、今回は作品裏面の作品の歴史を見ながら、「自分の過去を見る」という面白い体験をしました。
Vik Muniz: Verso
06.09 -09.04
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