なにやら民族的な力強い意匠の作品が壁面を飾っています。
テキスタイルのようなデザインですが、作品に厚みがありません。ポスターかしら?と思うくらいの薄さです。
これは、オランダ人のジェニファー・ティーの"Tulip Palepai"という作品です。ここには彼女のふたつルーツが融合しています。
彼女の父方の祖父母の出身地インドネシアの南スマトラの意匠と、母方の祖父母がアメリカとの間に行っていた貿易の商品であるチューリップです。
この船の意匠は、結婚式や葬式、通過儀礼をおこなう際に用いられるものだそうです。人間の魂を新しい人生や死後の世界に運んでいるのだそうです。
さて、もうひとつのチューリップはどこに用いられているかというと…。
実はチューリップの花弁によって作品が構成されているのです。ティーはこの作品を作るのに、2年の歳月を費やして作品に適したチューリップの研究をしたんだそうです。
花びらを一枚一枚乾燥させ、一枚一枚並べていく。途方もない時間をかけて制作したと思います。
生の儚さを象徴する花の色をとどめ、魂の門出の意匠を描き出す。この作品が最初に展示されたのは大勢の人が行きかう、アムステルダム中央駅の地下道。
ルーツ、意匠、素材、展示場所。背景を知れば知るほど、作者の思考の深みへと導かれていく作品です。
2017.02.17-2017.05.21
アムステルダム国立美術館 Rijksmuseum
museumstraat 1
The Netherlands
1071 XX Amsterdam
https://www.rijksmuseum.nl/en
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