草間彌生:オランダで愛される日本人アーティストと「インフィニティ・ポルカドット・ラブルーム」の魅力

2025年4月28日月曜日

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ここ数年、オランダで最も名前を耳にし、目にする日本人アーティストといえば、間違いなく草間彌生です。彼女の鮮やかな水玉模様や没入型のインスタレーションは、美術館の常設展で頻繁に登場し、訪れる人々を魅了しています。

近年では、2019年にフォーリンデン美術館(Museum Voorlinden)、2023年にスキーダム市立美術館(Stedelijk Museum Schiedam)で個展が開催され、2026年にはアムステルダム市立美術館(Stedelijk Museum Amsterdam)での大規模な展覧会も予定されています。草間彌生の作品は、オランダのアートシーンで確固たる存在感を放っています。

でも、なぜ草間彌生はオランダでこんなにも人気なのでしょうか?

その答えは、彼女のキャリアの意外な一面に隠されています。実は、草間は1960年代後半にオランダで活動していた時期があり、ヨーロッパ進出の拠点としてこの国を選んでいたのです。

草間彌生は1957年に渡米し、ニューヨークでアートシーンに旋風を巻き起こした後、1960年代中盤からヨーロッパでの活動を拡大しました。オランダはその重要な舞台でした。

1965年にはアムステルダムのステデリック美術館で開催された前衛アート展「Nul 1965」に参加し、1967年にはハーグのギャラリー・オレツ(Galerie Orez)で個展を開催。この時期、彼女はニューヨークで培ったミラールームのコンセプトをヨーロッパに持ち込み、ヨーロッパのアートシーンを驚かせました。

Infinity Polka Dot Love Room, 1967

特に注目すべきは、1967年のギャラリー・オレツでの個展で発表された《インフィニティ・ポルカドット・ラブルーム》(Infinity Polka Dot Love Room)です。この作品は、草間の代表作である「インフィニティ・ルーム」シリーズの初期作品であり、現代の「SNS映え」する没入型アートの先駆けともいえる存在です。

《インフィニティ・ポルカドット・ラブルーム》は、無数の水玉模様が広がるインスタレーションです。壁や天井、床だけでなく、5体のマネキンや、発表当時の写真に写る草間自身までがカラフルな水玉で覆われています。ハーグ美術館での展示では、ディスコのような明滅するカラフルなライトが空間を彩り、サイケデリックな雰囲気を一層際立たせていました。



草間のオランダでの活動は、彼女の国際的なキャリアを築く上で重要な一歩でした。オランダは、1960年代に前衛アート運動「ヌル(Nul)」が盛んで、実験的なアートを受け入れる土壌がありました。草間の水玉やミラールームは、この国のアートシーンと見事に共鳴し、観客に強烈な印象を残しました。

そして、現代のSNS時代が草間の人気をさらに加速させています。フォーリンデン美術館の《インフィニティ・ミラー・ルーム》や、ボイマンス・ファン・ベーニンヘン美術館の《Infinity Mirror Room - Phalli’s Field》など、視覚的に圧倒的な印象を与える作品がインスタグラムやTikTokで拡散され、若い世代にまでファンが広がっています。水玉とかぼちゃで知られていた草間ですが、こうした没入型アートが美術館の積極的な展示戦略と相まって、新たな観客を引き寄せています。

2026年に予定されているアムステルダム市立美術館の展覧会には多くの人がとずれることになるでしょう。そこでは草間彌生を単なる「映える」アートではなく、彼女の芸術性を深く知れる展示になることを期待しています。 

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ミイル。ブログ Miruu 管理人。オランダ芸術や街散策を中心に、美術だけでなく建築なども含めた芸術について広く紹介します。 Twitter: ミイル@miirublog

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