2025年、私にとってのアート体験は
「再生」の年でした。
過去の痛みを乗り越えて新たな表現が芽吹くような表現に溢れる場所に立ち会い、何度も胸が熱くなりました。ゴッホの輝くようなひまわりをキーファーが受け継ぎ、戦争の闇の中で守られた作品たちが静かに息を吹き返し、焼け落ちた港湾倉庫が不死鳥のごとく蘇って人類の移動の物語を語り始めた——そんな「再生」の連鎖が、今年の私のアート体験を彩ってくれました。
以下に、心に最も強く残った展覧会と施設を振り返りたいと思います。
ゴッホとキーファーの芸術的対話:Kiefer - Sag mir wo die Blumen sind(ゴッホ美術館、アムステルダム)
アンゼルム・キーファーの展覧会はゴッホへの深いオマージュでありながら、破壊と再生のドラマそのものでした。ひまわりの花びらが散り、種が大地に撒かれるイメージは、ゴッホの生命の輝きをキーファーが独自の歴史の解釈で包み込み、新たな命へと転化させる瞬間でした。ゴッホ美術館で開催されるべき展覧会でした。
第二次世界大戦下の美術館の記憶:Facing the Storm – A Museum in Wartime(マウリッツハイス美術館、デン・ハーグ)
オランダ解放80周年を記念したこの特別展は、ナチス占領下でのマウリッツハイス美術館の苦難の歴史を振り返るものでした。ナチス占領下で作品を守り抜いたマウリッツハイスの物語は、静かな再生の記録でした。作品に重要度を表すためにオランダの国旗の色「赤・白・青」の印が付けられた絵画たちが戦火を避け、いくつもの国家保管施設を経て再び光を浴びる経緯を知り、戦争の傷跡を乗り越えて美術館が再び開かれた瞬間の重みを思わずにはいられませんでした。戦争の脅威下でも美術館が果たした役割を考える、貴重な機会でした。
過去と現代の対話:Collected with Vision. Private Collections in Dialogue with the Old Masters(KMSKA、アントワープ)
アントワープ王立美術館のこの展覧会は、オールドマスターと現代の個人コレクションを対置させることで、時代を超えた美術の会話を実現していました。17世紀の「美術室の絵」とシンディ・シャーマンの写真、オラファー・エリアソンの光の作品とメムリンクの祭壇画、マレーネ・デュマのウォーホル肖像など、収集のあり方、神の世界、ジェンダー、死生観といったテーマが新鮮に再解釈されていました。また、個人コレクターの役割の重要性を強く感じました。
2025年の外せない出来事:FENIX美術館のオープン(ロッテルダム)
そして、2025年で絶対に外せないのが、5月15日にロッテルダムにオープンしたFENIX美術館です。世界初の「Migration(移住・移動)」をテーマにした美術館として、歴史的な港湾ビルを再生したこの施設は、不死鳥のように過去の破壊から蘇った象徴的な存在です。政治を超えて愛、別れ、希望、アイデンティティを描く展示「The Family of Migrants」やスーツケースの迷路インスタレーション、Yinka Shonibareや塩田千春などの現代アート、さらには二重らせん階段「Tornado」からの眺めまで、人類の移動の普遍性を芸術で体感できました。現在、移民を背景とする人が人口の半数以上を占めるロッテルダムで開館したというのも歴史的な重要な背景です。
さいごに、
これらの展覧会と新施設は、2025年のアートシーンを豊かに彩り、歴史の記憶や人間の根源的なテーマを再考させるものばかりでした。来年も素晴らしいアートとの出会いが続くことを願っています!
▼2025年はグラナダ旅行に行きました。念願のアルハンブラ宮殿も訪れました!
▼Jitsk(イースク)のオレンジスライスが2025年のベスト・チョコレート!
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