展示室を出てもまだ網膜に水玉が残っているような感覚が続き、ずっと気分が高揚したままでした。草間彌生の作品は自己と世界の境界を問いかける力を持っています。無限の鏡の部屋や執拗に繰り返されるモチーフに身を委ねているあいだに、草間彌生の作品のもつエネルギーに当てられてしまっていたようです。
そんな体験のあとに訪れた穏やかなカフェは、心を日常へと戻してくれる場所でした。
アムステルダム市立美術館の二階にあるFonda Caféは、入館者しか行けないカフェです。歴史ある美術館の内部にあり、モダンながら落ち着いた空間です。
大きな窓から柔らかな光が差し込み、装飾の施された高い天井と大きな鏡が、室内を寛いだ雰囲気にしています。鏡に映るアーチがいくつも重なり、どこか草間彌生の無限の空間を思わせるのも面白い偶然でした。
窓の外にはアムステルダムの街並みと木々が広がり、草間彌生の作品を見て高揚していた心が落ち着いていきました。
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| 部屋の両側の壁にそれぞれ大きな鏡が設置されて、合わせ鏡のようになっている |
ここで注文したのは、トマトスープとフレッシュ・ジンジャーティーです。
真っ赤なスープは見た目からして生命力に満ちていました。表面に散らされたケッパーとディルが濃厚なトマトの甘みと酸味にほどよい塩気とハーブの香りを添えてくれます。温かいトマトスープがエネルギーに満ちた展示を見て疲れていた身体にしみわたりました。
ジンジャーティーは、フレッシュな生姜の爽やかな辛みが喉を通り、頭をすっきりとさせてくれました。加えたハチミツも甘すぎず、香り高く、心を静かに整えてくれる一杯でした。
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| 小粒のケッパー(kappertjes)の塩味が絶妙 |
芸術を体験したあとには、目で感じ、心で考えたものをまとめ、日常へと帰っていく準備をする時間として、こうしたささやかなカフェの時間が欠かせません。



