20世紀のアメリカ人画家マーク・ロスコの展覧会がデン・ハーグ市立美術館で開かれています。ここにはワシントン・ナショナル・ギャラリーのロスコ・コレクションが展示されています。
ロスコといえば色彩で深い精神性を表現した画家のように知られていますが、本人としては色彩画家と呼ばれることに抵抗を感じていたそうです。自分が描く際に絵画と一体化していることを感じるように鑑賞者にも同じ体験を望んでいたようです。
最初の部屋には初期作品が並べられていました。人物画や静物画、街の風景の作品があって、具象から出発していて驚きました。でも形態をデフォルメしたものが多く、見たままを描いたものは少なかったです。上の作品も人物が長く引き伸ばされています。描かれているものはいわゆるロスコっぽさはありませんが、愁いを含んだような濁った色や荒い筆致は後のロスコの片鱗が伺えます。
第一大戦中、ヨーロッパの芸術家たちがアメリカに亡命し、多様なヨーロッパ芸術がアメリカにもたらされました。ロスコはそのような環境の中でシュルレアリスムやアヴァンギャルドの影響を受けて、象徴的なアプローチを試みていきました。
シュルレアリスムは哲学への興味も掻き立て、とくにニーチェに傾倒しました。自分の芸術を絵画ではなく言葉で表現するために数ヵ月間、絵を描くのをやめてしまったこともあったそうです。しかしその後、言葉よりも絵画を通して自らの芸術を伝えようと絵画に戻り、作風がそれまでの具象的な作品から一変しました。一番ドラマティックな変化が見られたのがこの展示室でした。
上の写真の4作品の年代は左から1947年、1948年、1949年、1949年です。左の2作品は風景や人物を連想させる形が残っていますが、右の二作品は色面で構成されています。
色彩も抽象画をを描き始めたころは目の覚めるような色が使われていましたが、だんだんと深く沈むような色彩を多用しました。サイズも大きくなり作品に飲み込まれるような感じがします。この作品の色がとてもステキで感動しました。画面では見えないと思いますが、カンヴァスの縁に使われている鈍いグレーと紫の組み合わせが綺麗でした。この色の組み合わせで作られたワンピースがあったらきっと買ってしまいます。
晩年の作品が展示部屋は教会の一室のように荘厳で、作品からは静かな振動が感じられるようでした。ロスコの作品は見るというよりも体験する絵画だと思います。本やパソコンのディスプレイでは分からない微妙な色彩の差違やブラッシュ・ストロークが作品を決定づけているからです。
Mark Rothko
2014.09.20-2015.03.01
Gemeentemuseum, Den Haag
Stadhouderslaan 41
2517HV, Den Haag
http://www.gemeentemuseum.nl/en/exhibitions/mark-rothko
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