芸術のリング上での決闘、ブライトナーとイザック・イスラエルス~Breitner vs Israels @ Kunstmuseum Den Haag

2020年4月15日水曜日

デン・ハーグ ハーグ美術館 展覧会

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オランダのハーグにあるハーグ美術館で、友人でありライバルであった二人の画家、ジョージ・ヘンドリック・ブライトナーとイザック・イスラエルスの展覧会が開催されています。(現在は新型コロナの影響で休館)

この二人の画家の間の相互のライバル関係は、何年にもわたって続きました。キャリアを通じて、ブライトナーとイスラエルスはお互いを賞賛し、羨ましく思い、刺激し合うことでより大きな芸術の高みへと昇っていきました。

下の自画像はブライトナーとイスラエルスが同時期に描いた自画像です。

George Hendrik Breitner, Self-Portrait, ca.1883, Dordrechts Museum

Isaac Israels, Self-Portrait with Bowler Hat, 1882, Private Collection

自画像を見てもわかるように、イスラエルスの方がずいぶんと年下です。その差、7歳です。

有名な画家ヨーゼフ・イスラエルスの息子イザックが16歳で美術界に登場したとき、その技術の高さで美術界の「プリンス」と呼ばれました。ブライトナーはこの天才の登場に注目しないではいられませんでした。なぜなら、ブライトナーは才能はあるものの技術が足りないと批判されることがしばしばあったからです。

一方、イザックはブライトナーの作品を見て「このような作品と争うことは無意味だ」といい、偉大な父ヨーゼフの影響から脱するためにブライトナーが成功をおさめ始めていた緩いタッチを学ぼうとしました。

George Hendrik Breitner, Singel Bridge at Paleisstraat in Amsterdam, 1896-1898, Rijksmuseum, Amsterdam

二人のキャリアは素朴な農民や漁村を描くハーグ派の拠点であるハーグで始めましたが、1886年にアムステルダムに移ります。そこでブライトナーは都市に暮らす人々を緩いタッチと大胆な構図で描き、注目を集めるようになります。

パリで印象派がブルジョワたちを描いたように、ブライトナーはアムステルダムで余暇を愉しむ富裕層を描きました。

上の作品はアムステルダムの王宮裏の橋での光景を描いています。今でも買い物客でにぎわうあたりです。


George Hendrik Breitner, View of the Lauriersgracht in Amsterdam with passers-by, 1893-1899, The Hague: Photo Collection RKD

ブライトナーの作品で特徴的なのが人物を画面端で大胆に切る構図です。上の写真でも窓枠(?)で女性のスカートの下の部分を切ってしまっています。

この構図はブライトナーが収集していた日本の版画の影響によるものでしょう。

George Hendrik Breitner, Girl in a Red Kimono, ca.1893, Kunstmuseum Den Haag

構図だけではなくて、ブライトナーの大胆で平面的なタッチも日本の版画の影響かもしれません。ハーグにはゴッホが働いてたグーピル商会で浮世絵を扱っていたので、そこで目にしていたんじゃないかなと思います。


Isaac Israels, Donkeys on the Beach, ca.1894-1898, Kunstmuseum Den Haag
イスラエルスはやわらかい色彩で軽やかな雰囲気をまとう作品を描くようになりました。細部に執着をすることをやめやさしい色彩を身に着けることで、偉大な父から脱却し、またブライトナーに後れをとることはなくなりました。



展覧会の最後に、同時代に切磋琢磨した二人の画家のどちらがより芸術的な高みへ到達したのか、ボクシングに例えて勝者はどちらであるか投票する場所が設けられていました。



芸術というリングの勝者はどちらでしょうか?



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Breitner vs Israels
2020.02.01-2020.05.10

Kunstmuseum Den Haag
Stadhouderslaan 41
2517HV, Den Haag
https://www.kunstmuseum.nl/en
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ミイル。ブログ Miruu 管理人。オランダ芸術や街散策を中心に、美術だけでなく建築なども含めた芸術について広く紹介します。 Twitter: ミイル@miirublog

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