クリムトの34mもの大作《べートーベン・フリーズ》を見るためにセセッシオン(分離派会館)へ~Secession in Vienna【ウィーン旅行_#10】

2023年12月29日金曜日

ウィーン ウィーン旅行2023 クリムト 美術館

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壁画であるため、動かすことのできないクリムトの作品《ベートーベン・フリーズ》を見に、セセッシオンへ行きました。



《ベートーべン・フリーズ》 はグスタフ・クリムトが1902年4月15日から6月27日にかけて開催されたウィーン分離派視覚芸術家協会がセセッシオンで行った第14回展覧会のために制作した壁画で、ベートーべンの交響曲第九番を視覚的に解釈・表現したものです。

この展覧会は21人のアーティストが参加し、クリムトのこの壁画は展覧会に入ってすぐの左側の通路にあったそうです。


セセッシオンの建物は屋上に設置された金色の月桂樹の葉でできたドーム(通称:黄金のキャベツ)が目印

展覧会が閉幕後、翌年開催されるクリムトの大回顧展まで作品はそのままの状態で保存されました。その後、壁画は8つにカットされてコレクターたちの手を経たのち、1985年にセセッシオンに戻ってきました。ただし、もとの展示場所ではなく、展示場所は地下へと変更されました。

セセッシオンの地下室は《ベートーべン・フリーズ》のために作られました。部屋の大きさや展示位置、また作品保存に最適な環境条件を満たしています。

《ベートーべン・フリーズ》はベートーべン第九交響曲に基づいて3つの部分に分かれていて、「幸福への憧れ」(左の壁)、「敵対する勢力」(中央正面の壁)、そして「歓喜の歌」(右の壁)へと連続して描かれています。



まず最初の左の壁では人間の「幸福への憧れ」を象徴する浮遊する女性たちの姿が連なっています。


「幸福への憧れ」の先には、手を合わせ、膝をついて庇護を求める弱い人間が描かれます。そして、彼らの前には黄金の甲冑に身を包んだ騎士が大剣を手に立っています。

黄金の騎士の後ろにいる女性は左から「野心」と「憐み」の象徴です。




正面中央の壁「敵対する勢力」へと移ります。



下にいる三の女性たちは「病気、狂気、死」の象徴してゴルゴン三姉妹が描かれています。頭にうねうねと蛇が巻き付いています。

彼女たちの後ろには痩せて目が落ちくぼんだ「死」の象徴が描かれています。

左上の怖いけどちょっと愛嬌のあるの4つの顔の解説を読んだのですが、忘れてしまいました。さまざなま病気を表現していたと書いてあったような、そうじゃなかったような…。



悪の化身、巨人テュフォンがいます。顔はゴリラで、見開いた目は象嵌で妖しく光っています。体は右側に伸びていて、大きな翼をもつ大蛇のようです。

巨人テュフォンの右側には「淫欲」や「不貞」そして、大きなお腹の「不摂生」を表す人物像がいます。



巨人テュフォンの大きな翼の下で、やせ細った腕と足を曲げてうずくまる哀しみの姿があります。



そして、最後に右の壁「歓喜の歌」に進んでいきます。

最初の壁から浮遊していた「幸福への憧れ」を体現する女性は、巨人テュフォンのいる「敵対する勢力」の上を飛び越えて、詩の女神の場所へと到りました。

ベートーベンはシラーの詩「歓喜に寄せて」を書き直して第九の「歓喜の歌」を制作したので、それをなぞらえているんだと思います。

そして、詩の女神の右側には空白が拡がります。

この空白部分は破壊されてなくなったのでもなんでもなくて、「あえて」の空白です。

初めてこの《ベートーベン・フリーズ》が公開された第14回ウィーン分離派展のとき、この空白部分の下の壁が窓のように壁が抜けていて、隣のメインホール中央に置かれた椅子に座って思索にふけるベートーベンの像が臨むことができました。ここはベートーべンが第九交響曲をまさに生み出そうとしている緊張感のある場面です。

下から炎が燃え上がるように「諸芸術」を表す女性たちが立ち上がり、手を伸ばし、彼女らに導かれて、歓喜の歌を歌う女性たちへと到達します。ベートーべンの第九のあの最も有名な部分です。

抱き合う恋人たちは「敵対する勢力」への勝利と「幸福への憧れ」が成就を表し、第九の「歓喜の歌」のもととなったシラーの詩「歓喜に寄せて」の一部

抱き合おう、諸人!
この接吻を全世界に!

を表しています。


1907年制作

ちなみに、クリムトが《接吻》を描いたのはベートーベンフリーズから約5年後です。


展示室の中ではベートーベンの第九交響曲が流れていました。絵画と音楽の関係、それからここには書きませんでしたが当時のクリムトとウィーン美術界の(あまりよくない)関係などを考えていたら、一部屋だけなのに思ったより長い滞在時間になりました。





分離派館の入口の上にある3つの頭部はゴルゴン姉妹です。



セセッシオン(分離派会館)
Vereinigung bildender Künstler*innen Wiener Secession
Friedrichstraße 12
1010 Vienna


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ミイル。ブログ Miruu 管理人。オランダ芸術や街散策を中心に、美術だけでなく建築なども含めた芸術について広く紹介します。 Twitter: ミイル@miirublog

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