オランダの海辺にある美術館Beelden aan Zeeを訪れました、海辺の光が自然に差し込むこの美術館は。今年リニューアルオープンし、さらに自然とのつながりが強く感じられる空間になりました。
| この日は天気が悪かった |
そこで2026年6月27日から2027年1月10日まで開催されている展覧会「Rui Chafes X Alberto Giacometti: Gris, Vide, Cris III」は、現代の彫刻家ルイ・シャフェスと20世紀の巨匠アルベルト・ジャコメッティの作品を、初めてオランダで対峙させるものです。
この展覧会は、ジャコメッティの詩から取られた「Gris(灰色)、Vide(虚空)、Cris(叫び)」というテーマのもと、二人の芸術家が共有する「見えないものを可視化する」探求を展開しています。
生と死の偶然が紡ぐ出会い
ルイ・シャフェス(1966年、リスボン生まれ)は、アルベルト・ジャコメッティ(1901-1966)が亡くなった年に生まれました。二人は時代も場所も表現言語も異なりますが、彫刻を通じて「存在と不在」「身体と空間」「物質と精神」の緊張関係を探る点で深く通じ合っています。
ジャコメッティは、戦後、人物像を極端に細く、長く削ぎ落とすことで、存在の儚さと孤独を表現しました。
彼の作品は、物質でありながら空間に溶け込み、観る者に「ここにいるのに、どこか遠い」という切ない実存の感覚を抱かせます。
一方、シャフェスは鉄板を折り曲げて作るマットブラックの彫刻で、閉じた形態の中に強い内向性と霊的な広がりを持たせます。重い鉄でありながら、浮遊するように軽やかで、まるで息づいているかのようです。
La Nuit(夜)
展覧会のハイライトの一つが、シャフェスによる《La Nuit》(2018年)です。これはジャコメッティの《Le Nez》(鼻、1947-50年)を包み込む鉄の構造物です。
ジャコメッティの《Le Nez》は、細長く突き出た鼻が特徴的な初期の石膏習作で、人間の身体を異化し、存在の不確かさを浮かび上がらせます。
シャフェスはこの作品を「夜」の闇で包むことで、ジャコメッティの人物像をより瞑想的な次元へ導きます。
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| ジャコメッティの白い石膏像の周りを、シャフェスが鉄で制作した《La Nuit》が包む |
シャフェスはさらに、ジャコメッティの10点の作品を基に、新作を含む一連の彫刻を制作しました。
特に《Au-delà des yeux》(目の向こう側)や《Lumière》(光)といった暗いインスタレーションは、建築的な通路を持ち、観客を内部へ招き入れます。
真っ暗な空間を歩いていくと、光のスリットがあり吸い込まれるように覗くと、そこにジャコメッティの作品がありました。

ジャコメッティの細い人物像を細いスリットや別の視点から眺める体験は、興味深いものでした。ジャコメッティの人物像は、伝統的な彫刻が持っていた「量塊としての身体」から解放され、線と空間の緊張によって成立します。
灰色・虚空・叫びの境域
ジャコメッティが削ぎ落して作品を制作したのに対して、シャフェスは鉄の「殻」の中に虚空を宿らせます。
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| シャフェスの作品は内から膨らんでいる |
身体は「檻」であり、同時に「殻」——内なる自己を守るものでもあり、囚われるものでもある、というロマン主義的・実存的なテーマが、静かに響き合います。シャフェスの影響源であるノヴァーリスの思想(自然のすべての力は一つの力である)が、ここで美しく体現されていると言えます。
「Gris(灰色)」は可視と不可視の間の微かな移ろい、「Vide(虚空)」は経験が生まれる空間、「Cris(叫び)」は人間存在の強度を表します。この三つが交差する境域で、ジャコメッティの脆弱でタイムレスな人間像は、シャフェスの沈黙の彫刻の中でより深く息づきます。
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| 左右をシャフェスの作品に囲まれる、ジャコメッティの作品 |





