オランダ在住のアート好き、ミイルです。
海辺の彫刻美術館(Museum Beelden aan Zee)は、オランダのハーグ近郊、スヘーフェニンヘンの砂丘に佇む、彫刻専門の美術館です。海の風を感じながら、近現代から現代の彫刻作品と静かに向き合える場所として、多くの人に親しまれている美術館です。
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| 美術館の前の道を登っていくと海に着きます。 |
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| 屋上庭園から海が望める |
2026年に開催されている「Reclining Figures」展は、そんな美術館の南ホールを中心に、彫刻史において最も古く、最も親しみ深いモチーフの一つである「横たわる人物像(Reclining Figure)」を集めた企画展です。古代から続くこの主題は、単なる休息や瞑想を表すだけでなく、人間と環境、自然、そして内面的な存在とのつながりを象徴してきました。
横たわる人物像の美術史的伝統
横たわる人物像の歴史は、ヨーロッパ美術に深く根ざしています。ミケランジェロのメディチ家墓廟の《夜》(Notte)やティツィアーノの《ウルビーノのヴィーナス》、カノヴァの《パオリーナ・ボルゲーゼ像》、マネの《オランピア》、さらにはマイヨールの《川》など、時代ごとの傑作がこのモチーフを彩ってきました。これらの作品は、ただ横たわる姿を通じて、緩やかさ、美しさ、時にエロティシズムや自己主張を表現してきました。
特に、横たわる人物はベッドで眠るような完全な横臥ではなく、上体をやや起こした姿勢を取ることが特徴的です。これは古代ローマの食事の様子を思わせ、また休暇中に海を眺めながら体を起こすような、生き生きとした休息の瞬間を思い起こさせます。芸術家たちはこの形式を基に、新しい意味を加え続けてきました。
ヘンリー・ムーアの革新とその影響
20世紀の彫刻において、このモチーフを最も深く探究した一人といえばヘンリー・ムーア(1898-1986)です。
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| Henry Moore, Two Piece Reclining Figure No.4, 1961 |
彼の作品では、人体と風景が溶け合い、抽象化されながらも有機的な生命感を保っています。展覧会に展示されている《Two Piece Reclining Figure No.4》(1961、ブロンズ)は、その好例です。二つの塊が一つの人体を示唆するこの作品は、視点を移すたびに姿を変え、時に一つの身体として、時に別々の岩のような風景として見えてきます。
ムーアの足跡をたどるように、さまざまな作家が独自の解釈を展開しています。
オランダの作家シャルロッテ・ファン・パッラント(1898-1997)のテラコッタ作品は、小さなスケールながら情感豊かで、過ぎ去った時代への切ない憧れを感じさせます。
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| Charlotte van Pallandt, Liggende figuur leunend op linkerarm, 1941 |
一方、ヤン・メーファウト(1915-1993)の《眠れるビーナス(Sluimerende Venus)》は、素材の塊から柔らかなヴィーナスが海の泡のように浮かび上がるような、優しく魔法めいた印象を与えます。観る者の心を和ませる人気作の一つです。
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| Jan Meerfout, Sluimerende Venus, 1984 |
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| Mimmo Paladino, Uomo e coccodrillo, 1994 |
美術館訪問の楽しみ
Beelden aan Zeeの魅力は、作品が海という自然環境と響き合う点にあります。横たわる人物像たちは、砂丘の向こうの海を思わせ、観る者に「自分もまた、風景の一部として横たわってみたくなる」ような、穏やかな誘惑を与えます。
この展覧会は、彫刻の歴史を振り返りつつ、現代を生きる私たちが持つ「休息」「存在」「つながり」についての問いを、静かに、しかし温かく投げかけてくれます。








