海辺の彫刻館で出会う、横たわる人間の深み――Reclining Figures at Museum Beelden aan Zee

2026年9月25日金曜日

デン・ハーグ 展覧会

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オランダ在住のアート好き、ミイルです。

海辺の彫刻美術館(Museum Beelden aan Zee)は、オランダのハーグ近郊、スヘーフェニンヘンの砂丘に佇む、彫刻専門の美術館です。海の風を感じながら、近現代から現代の彫刻作品と静かに向き合える場所として、多くの人に親しまれている美術館です。

美術館の前の道を登っていくと海に着きます。

屋上庭園から海が望める

2026年に開催されている「Reclining Figures」展は、そんな美術館の南ホールを中心に、彫刻史において最も古く、最も親しみ深いモチーフの一つである「横たわる人物像(Reclining Figure)」を集めた企画展です。古代から続くこの主題は、単なる休息や瞑想を表すだけでなく、人間と環境、自然、そして内面的な存在とのつながりを象徴してきました。

 

横たわる人物像の美術史的伝統


横たわる人物像の歴史は、ヨーロッパ美術に深く根ざしています。ミケランジェロのメディチ家墓廟の《夜》(Notte)やティツィアーノの《ウルビーノのヴィーナス》、カノヴァの《パオリーナ・ボルゲーゼ像》、マネの《オランピア》、さらにはマイヨールの《川》など、時代ごとの傑作がこのモチーフを彩ってきました。これらの作品は、ただ横たわる姿を通じて、緩やかさ、美しさ、時にエロティシズムや自己主張を表現してきました。

特に、横たわる人物はベッドで眠るような完全な横臥ではなく、上体をやや起こした姿勢を取ることが特徴的です。これは古代ローマの食事の様子を思わせ、また休暇中に海を眺めながら体を起こすような、生き生きとした休息の瞬間を思い起こさせます。芸術家たちはこの形式を基に、新しい意味を加え続けてきました。


ヘンリー・ムーアの革新とその影響


20世紀の彫刻において、このモチーフを最も深く探究した一人といえばヘンリー・ムーア(1898-1986)です。
Henry Moore, Two Piece Reclining Figure No.4, 1961

彼の作品では、人体と風景が溶け合い、抽象化されながらも有機的な生命感を保っています。展覧会に展示されている《Two Piece Reclining Figure No.4》(1961、ブロンズ)は、その好例です。二つの塊が一つの人体を示唆するこの作品は、視点を移すたびに姿を変え、時に一つの身体として、時に別々の岩のような風景として見えてきます。

ムーアの足跡をたどるように、さまざまな作家が独自の解釈を展開しています。

オランダの作家シャルロッテ・ファン・パッラント(1898-1997)のテラコッタ作品は、小さなスケールながら情感豊かで、過ぎ去った時代への切ない憧れを感じさせます。

Charlotte van Pallandt, Liggende figuur leunend op linkerarm, 1941

一方、ヤン・メーファウト(1915-1993)の《眠れるビーナス(Sluimerende Venus)》は、素材の塊から柔らかなヴィーナスが海の泡のように浮かび上がるような、優しく魔法めいた印象を与えます。観る者の心を和ませる人気作の一つです。
Jan Meerfout, Sluimerende Venus, 1984
 


ミンモ・パラディーノの《Uomo e Coccodrillo》のように、胎児のような姿勢と動物の組み合わせが神話的な響きを加える作品も、視野を広げてくれます。

Mimmo Paladino, Uomo e coccodrillo, 1994
  

美術館訪問の楽しみ


Beelden aan Zeeの魅力は、作品が海という自然環境と響き合う点にあります。横たわる人物像たちは、砂丘の向こうの海を思わせ、観る者に「自分もまた、風景の一部として横たわってみたくなる」ような、穏やかな誘惑を与えます。

この展覧会は、彫刻の歴史を振り返りつつ、現代を生きる私たちが持つ「休息」「存在」「つながり」についての問いを、静かに、しかし温かく投げかけてくれます。






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ミイル。ブログ Miiru 管理人。オランダ芸術や街散策を中心に、美術だけでなく建築なども含めた芸術について広く紹介します。Twitter: ミイル@miirublog

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