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フィレンツェの中心地にあるサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂(ドゥオーモ)の向かいに、八角形の形をした建物があります。
これはサン・ジョヴァンニ礼拝堂で、11世紀に建てられました。
そこには黄金の扉があり、いつもそこには人だかりができています。
15世紀初め、このサン・ジョヴァンニ礼拝堂の入り口を飾る《天国の門》の制作をする彫刻家を決めるコンペティションがフィレンツェで行われました。
サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂の向かいの扉の制作を担当する当代随一の芸術家を決めるコンペです。
それに名乗りを挙げた7人の中から最終選考に残ったのは、ブルネレスキとギベルティでした。
二人は「イサクの犠牲」をテーマに、その腕を競いました。
左:ギベルティ、右:ブルネレスキ |
ふたりから提出されたのが上の2作品です。
バルジェロ美術館で隣り合わせに展示されています。(光が反射して見えにくかったので斜めからですみません。)
このコンペティションを経て、実際の門を制作したのはギベルティ(左)でした。
私は本でこのコンペのことも読んでいたし、ふたりの作品を図版で見ていたのですが、その時はブルネレスキも「正直、悪くない」と思っていました。
むしろ構図のバランスという点ではよいのではと思っていたのですが、実際の作品を見ると圧倒的にギベルティのほうが優れていました。
飛び出すところと引っ込むところ、つまり凹凸の緩急のつけ方が桁違いにうまいのです。
ギベルティは粗い岩の凹凸と細かな洋服の襞の表現のコントラスト。
そしてこの場面で一番ドラマてチックな部分である、息子を手にかけることを覚悟したアブラハムの厳しい顔とその短刀とつきつけられた背景が抜けていて、よりその細かな描写が引き立ちます。
右のブルネレスキは、モティーフを散らして画面全体を使って表現しています。
比べてみると求心的な力を持った作品はギベルティのほうです。
現在は、実際に制作された門はサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂を挟んで反対側のドゥオーモ付属博物館で展示されています。
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