この荘厳な礼拝堂は、15世紀後半にスペインを統一し、レコンキスタを完成させたカトリック両王――イサベル1世(カスティーリャ女王)とフェルナンド2世(アラゴン王)の遺志を体現する場所です。
レコンキスタの最終地、グラナダ
1492年1月2日、カトリック両王がグラナダのナスル朝(イスラム政権)を降伏させ、イベリア半島のキリスト教による再征服(レコンキスタ)が完了しました。この歴史的瞬間は、アルハンブラ宮殿での降伏協定の調印によって刻まれ、グラナダはキリスト教世界の新たな中心として生まれ変わりました。ロイヤル・チャペルは、この偉業を記念し、両王が永遠に眠る場所として選んだ特別な場所です。
ロイヤル・チャペルの歴史
ロイヤル・チャペルは、1504年にカトリック両王の命で建設が始まり、彼らの死後、その遺体が安置される霊廟として完成しました。ゴシック様式の建築は、重厚かつ繊細で、スペイン史の転換点を物語る装飾が訪れる者を過去へと誘います。アルハンブラの華やかなイスラム建築とは対照的な、厳粛な雰囲気が漂う空間です。
ロイヤル・チャペルの宝物
ロイヤル・チャペルは、ただの礼拝堂ではありません。カトリック両王の遺産が訪れる者を魅了します。
1. ゴシック様式のレタブロ(祭壇装飾)
祭壇を飾るレタブロは、ゴシック様式の傑作です。木や石に金箔と彩色が施され、キリストの生涯や聖母マリア、聖人の物語が立体的な彫刻とパネルで構成されています。まるで荘厳な人形劇が目の前で繰り広げられているような迫力があります。
両王の深いキリスト教への信仰心と、レコンキスタの勝利を象徴するモチーフが織り込まれ、グラナダをキリスト教の中心として位置づける彼らの強い意志が感じられます。写真撮影は禁止なのが残念ですが、その分、じっくり味わえた気がします。
▼画像は公式サイトからどうぞ。
El gran retablo mayor – Capilla Real de Granadacapillarealgranada.com
2. カトリック両王の霊廟
礼拝堂の中心には、イサベル女王とフェルナンド王の大理石の墓碑が並びます。彫刻家ドメニコ・ファンチェリによる精巧な彫刻は、ルネサンスの影響が色濃く、細部まで見入ってしまう美しさです。
その下にある、地下の納骨堂では、両王の実際の棺を覗くことができ、「この人たちがスペインの歴史を変えたんだ!」と実感する瞬間は鳥肌ものでした。アルハンブラの豪華さも素晴らしいけれど、この静かな霊廟は深い感動を呼び起こします。
3. サクリスティ博物館の宝物
併設のサクリスティ博物館(Sacristy-Museum)には、カトリック両王の遺産が展示されています。イサベル女王の金細工の王冠とセプター(王権を象徴する儀式用の杖)、フェルナンド王の剣は、彼らの統治者としての威厳を物語ります。特に印象的なのは、フランドル派やイタリア派の宗教画のコレクション。サンドロ・ボッティチェッリの《ゲッセマネの祈り》や、ハンス・メムリング、ロヒール・ファン・デル・ウェイデンの作品は、深い信仰心と芸術性が融合した素晴らしい作品でした。
そのほか、イサベルのミサ典書や祭壇用の十字架など、宗教的工芸品も見逃せません。博物館はコンパクトなので、個人旅行者なら1時間ほどでじっくり楽しめます。
ロイヤル・チャペルの魅力
ロイヤル・チャペルを訪れると、レタブロの金箔の輝き、霊廟の厳粛さ、博物館の宝物から、カトリック両王の壮大な物語が生き生きと伝わってきます。墓碑の前で「この二人がスペインの歴史を変えたんだ」と実感した瞬間、前日に訪れたアルハンブラの華やかさを超える感動が胸に響きました。
▼グラナダのロイヤル・チャペル公式サイト
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