オランダ、デン・ハーグの夏の風物詩、野外彫刻展「Voorhout Monumental」が始まりました!今年のテーマは「想像力を讃えよう(Vier de verbeelding)」というものです。Pulchri Studio主催の本展では、現代アーティストによるモニュメンタルな彫刻やインスタレーションが展示されます。
今回はこの野外彫刻展に、これまた毎年開催される「Blow Up!」というバルーンアートの展覧会が加わって、例年以上に盛り上がりを見せています。
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Ronald A. Westerhuis, New Life |

会場入口にドンと立つこちらの作品。野外彫刻展の始まりを告げる作品です。周りの新緑を反射して美しいです。
ロナルド・A・ウェスターハイス(Ronald A. Westerhuis)はステンレスを鏡面仕上げにすることによっておこる反射の効果を巧みに用いています。
彼は2023年の野外彫刻展「Voorhout Monumental」にも参加していて、そのときはVoorhout通りの反対側のエッシャー美術館が入っているエマ宮殿のまえに《Air》を展示しました。エッシャーの作品に影響を受けて制作した《Air》は大きな成功を収め、今回の作品も同様の期待をもって彫刻展入口に設置されたのだと思います。開催者によるその思惑は成功したと思います。
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2023年の彫刻展で発表した《Air》。背後の建物がエッシャー美術館(エマ宮殿) |
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Ronald A. Westerhuis, New Lifeの背面 |
作品の背後から見たところ。裏面は鏡面仕上げではなくて、植物が力強く天へ伸びていくような文様が刻まれています。
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Rob Zweerman, TRANSMISSION |
Rob Zweermanの作品はDNAなどのらせん構造をしていて、「伝達」や「接続」をテーマにしていて、タイトルから推測すると、情報、感情、またはエネルギーの伝播を視覚的に表現していると考えられます。
今回のテーマ「想像力を讃えよう」に沿い、観客に「伝達」の概念を自由に解釈させ、抽象的な形で想像力を刺激しています。
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Niko de Wit, Wachter |
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Klaas Gubbels, Kroonstoel |
王様の椅子だそうです。
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Aris de Bakker, Big Mama welcomes you |
今回の野外彫刻展で一番気に入ったのは下の作品です。暖色のプラスチック製品で都市の景観を形作っています。美しい木々の緑と太陽光を反射したり透過したりして、目を引く作品でした。
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Carolien Adriaansche, Kunststof 734 |
Carolien Adriaanscheによると、このプラスチックの素材はすべて、この彫刻展が開催されているデン・ハーグからでた廃棄物なんだそうです。それらが都市を構成していて、廃棄物によって現在の都市が置き換わる悪夢が美しく表現されています。
私たちが買ったものは最終的にはすべて廃棄物になります。彼女の作品は私たちのライフスタイルや、地球を守る責任について考え、より持続可能な未来を考えるきっかけを与えてくれます。
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Eugenie Boon, Koncha pa dilanti |
ユージニー・ブーン(Eugenie Boon)はキュラソー島出身で現在はオランダのデン・ハーグを拠点とする多分野にわたる現代アーティストです。彼女の作品は、キュラソー島での育ちとその島とオランダの歴史的関係に深く根ざしており、宗教、植民地主義、ジェンダー、アイデンティティ、文化的二重性のテーマを探求しています。
今回の作品には彼女の作品に繰り返しあらわれるボードゲームが用いられています。ボードゲームにはサイコロを振ってとまる場所によって幸運と不運がおこります。それによって人生の困難と希望を描写しています。
今年、オランダでは移民美術館「FENIX」が開館したり、移民によるアートや移民に関するアートへの関心が高まっていますので、興味ある方はこちらの記事もどうぞ。
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Kiki & Joost, De juiste richting |
Kiki & Joost(キキとヨースト)は、デザインとアートの境界を越えた作品で知られるアーティストデュオです。彼らのインスタレーションは、BlowUp Artの一環としてPulchri Studioの歴史あるファサードから「飛び出す」ように設計されており、視覚的に大胆で遊び心のある作品です。
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窓から出たチューブが地中に潜って、右の街路樹のある芝生から再び飛び出しています |
この作品は、建築とアートの融合を試み、ファサードをキャンバスとして活用することで、伝統的な美術館や過去のアートからの解放を体現しています。チューブのあざやかな色とさまざまな方向を指す矢印によって奔放なエネルギーを感じます。
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Piet Warffermius, Growth |
奔放で大きなエネルギーに当てられたあとなので、この落ち着いた有機的な形がとても落ち着きます。
ピート・ワルフェミウス(Piet Warffemius)の作品で、彼は抽象的な彫刻を得意としています。この作品ではイチョウをモティーフにしていて、軽やかさと四方八方へと伸びていこうとする植物の成長を感じます。
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Fransje Killaars, All colours are free 2025 |
フランスェ・キラールス(Fransje Killaars)はテキスタイルを用いた色彩豊かなインスタレーションが特徴です。彼女の作品は、日常的なものであるクッションを巨大化させています。肩から足まですっぽりと布で覆われた頭部のない人物が立っています。
伝統の階段から降りた人物か、一人の人物が物へと変容し伝統に飲み込まれるところを表しているのでしょうか。
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John Körmeling, The correct calendar |
周囲の木々と美しく調和した作品です。
ジョン・ケルメリング(John Körmeling)は建築とアートを融合させたユーモラスな作品で知られています。彼の作品はメインストリートから少し離れていてあまり足を運ばない場所に展示されていて、「他人が見過ごすものに気づかせるアーティスト」と言われる彼にぴったりの場所だと思いました。
気候の良いこの時期にのんびりと歩きながら、刺激的なアートに触れるよい機会でした。
▼オランダで李禹煥(リー・ウファン)の展覧会がみられるとは思わなかった
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