ロンドンのナショナルギャラリーで開催中の展覧会、Reflections: Van Eyck and the Pre-Raphaelites。ラファエル前派によるファン・エイクの受容を鏡を軸に据えて振り返る展覧会です。
ラファエル前派は、1848年、ロイヤル・アカデミー付属美術学校の学生であったダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ、ウィリアム・ホルマン・ハント、ジョン・エヴァレット・ミレイの3人の画家によって結成されました。
彼らの指針となった作品のひとつがファン・エイクの《アルノルフィーニ夫妻》。この作品はロンドン・ナショナル・ギャラリーが1842年に購入したもので、当時、イギリスにある唯一のファン・エイクの作品でした。
描かれた二人はイタリア人商人ジョヴァンニ・ディ・ニコラ・アルノルフィーニ とその妻で、フランドルのブルッヘにあった夫妻の邸宅を背景として描いた作品だとされています。
実際に展示されていた作品をつぶさに観察すると、ファン・エイクの超絶技巧に驚嘆します。ビロードのドレスの襞の滑らかさ、レース飾りの繊細さ、毛が一本一本描かれている毛布や絹のように美しい髪の毛。どこを切り取って拡大してみても破綻のない、正確な描写です。
室内を描いた背後の壁の中央には、円形の鏡があります。ここには第二の物語が描かれています。凸面鏡には戸口に立つ二人の人物が映っており、一人は画家のファン・エイク自身であると考えられています。鏡は空間に奥行きを与え、中央が膨らんだ凸面鏡は魚眼レンズのような面白い効果を加えています。
ラファエル前派はファン・エイクの細密描写と鮮やかな色彩の影響を受けていますが、この鏡も好んで使用しました。ラファエル前派のメンバーによる鏡の使用に関して、大きく二つのグループに分けられます。
ウィリアム・ホルマン・ハントは空間を拡げる舞台装置として鏡を使用しました。《良心の眼覚め》では、鑑賞者の背後にある庭が映るように鏡を設置しています。そして、愛人の膝の上に座っていた女性が、外の風景にを見たことによって、突然、良心に目覚めて立ち上がろうとしている場面をを描いています。
ロセッティやバーン・ジョーンズは描かれた人物の複雑な心理を表す真実の鏡として利用しました。「アーサー王伝説」に出てくる「シャロットの乙女」を描いたジョン・ウィリアムス・ウォーターハウスが描いた大きな亀裂の入った鏡には、恋しい男性を見たいと願ったばかりに死ぬ運命をたどるシャロットが暗示されています。
展覧会場はあまり広くはありませんでしたが、要所要所に鏡が斜め向きに設置され、空間の広がりと写り込む光景の面白さを提供していました。
Reflections: Van Eyck and the Pre-Raphaelites
2017.10.02-2018.04.02
展覧会場はあまり広くはありませんでしたが、要所要所に鏡が斜め向きに設置され、空間の広がりと写り込む光景の面白さを提供していました。
Reflections: Van Eyck and the Pre-Raphaelites
2017.10.02-2018.04.02
ナショナルギャラリー、ロンドン
Trafalgar Square
London WC2N 5DN
http://www.nationalgallery.org.uk/
http://www.nationalgallery.org.uk/
0 件のコメント:
コメントを投稿